ハンググライダー日本代表選手・鈴木由路が語る 空の魅力 vol7 【感動の階段】section4
鈴木由路||アスリート

【感動の階段】


ハンググライダーは感動的な瞬間の連続である。


初めて足が浮いた瞬間。
それは背中に羽が生えた瞬間である。


初めて山の頂きから飛んだ瞬間。
それは空という新しい世界に飛び込んだ瞬間である。


初めて山々を上空から眺めた瞬間。
それはヒトからトリに生まれ変わった瞬間である。


初めて上空2000mを超えた瞬間。
それは自分が地球という星の上で生きていることを知る瞬間である。


ハンググライダーという翼を手に入れた時から、感動で出来た階段をひとつひとつ登っている。


詩:鈴木由路


僕がハンググライダーを始めて3年の間に感じた感動を元に作った詩。

全8回に渡って綴っている『ハンググライダー日本代表選手・鈴木由路が語る空の魅力vol7』の第4節です。


「初めて上空2000mを超えた瞬間。
それは自分が地球という星の上で生きていることを知る瞬間である。」

サーマルソアリング(※1)もだいぶ慣れてきた冬のある日。
「飛ぶことが楽しくてとにかくたくさん飛びたい」
いつもと変わらず飛ぶ回数を重ねようといつもの空にテイクオフ。


今日はサーマルソアリングが調子良くどんどん高度が上昇していく。
高度1500m近く上昇したところで、今日は北東の方へ進んでみる。


5分くらい進んだところでまたサーマル(※2)を見つける。
再度上昇し、さらに東へ進む。


サーマルを何個も乗り継ぎ、30分くらい進んだところでグイグイ上がっていくサーマルに出会う。
高度2000mを超えたあたりから、旋回もせず真っ直ぐ進むだけでどんどん高度が上がっていく。

空気はとても穏やかで安定している。
高度2500m、雲の横をエレベーターのように上がっていく。

雲の上に出て、後ろを振り返るとそこにはキレイな雲海。
計器を見て高度3000mという数字に驚く。

そして、ふと横を見てみると水平線がどこまでも広がっている。


その水平線ははっきりと弧を描いていた。

「 地球ってやっぱり丸いんだ 」
自然とそうつぶやいていた。

もちろん海辺に立って水平線を見たことはある。
しかし、今見ているのは地上から見るそれとはあきらかに違う。


自然の力が作るサーマルで高度を上げ、地球そのものを見る。

ハンググライダーは、まさに「地球を感じることができるスポーツ」である。

ハンググライダー水平線

※写真は別の日に撮影したもの


※1『サーマルソアリング』・・・サーマルの中で旋回し続けることにより高度を上げていくこと。
※2『サーマル』・・・空にできる円柱の形をした上昇気流のこと。地面が太陽光で温められることにより発生する。


僕はハンググライダー選手として「世界選手権でメダル獲得」を目指している傍ら、ハンググライダーの普及活動にも力を注いでいます。

「自然や地球を肌で感じることができて、普段の生活では絶対に出会えない感動を味わえる、こんなにも楽しいスポーツをなんでみんなやらないんだろう?みんなもやればいいのに。」
こんな想いからたくさんの人にハンググライダーの魅力を伝え続けています。