『上達スパイス』では、鈴木由路が初山頂から5年で世界選手権出場するに至った経験を踏まえ、どうやって上達していったら良いかのスパイスをお伝えしていきます。
第3回目は「ソアリングの上達」をお話します。
【自分のソアリングは何点?】
ソアリングの上達に関しては、ほとんどのフライヤーが知りたいことですよね。
僕自身もこれに関してはまだまだ上達の余地があると思ってます。
なんせ目に見えない”上昇気流”と名の付いた空気が相手ですから。
ある上昇気流に対して「100点満点のソアリングする」ことは不可能です。
自分が回っているすぐ横にもっと強いコアが存在しているかもしれない。
どんなパイロットでも常にそれを探してソアリングしています。
では、どうやったら自分のソアリングを採点したら良いのか?
それは、上手なパイロットと一緒に飛ぶことです。
ランキング上位の選手はおそらく90点以上のソアリングをしています。
そういったパイロットと一緒に飛ぶことによって「ソアリングのどの部分でミスをしたか」が分かりますし、降りた後に的確なアドバイスをしてくれることでしょう。
【ソアリングの効果的な3つの練習方法】
では、どんな練習をしたらソアリングが上達するか。
もちろんたくさんサーマルに入ってソアリングを繰り返すことが上達の近道ですが、以下の3つを意識するだけでより上達しやすくなるでしょう。
①一定バンク一定速度の一定旋回を心がける
まず初・中級者が意識したいのは「一定バンク・一定速度の一定旋回」でソアリングすること。
ソアリングして高度を獲得するのに一番大事なことは、”サーマルから外れない”ことです。
「少しでも上昇率を上げよう」と必要以上に低速にしたり、「コアにすぐに絡みたい」と急にバンクを深くしたりすると、コアを見失いサーマルから外れてしまいます。
これらは上級者のスキルです。
まずは一定旋回を心がけ、旋回の中心がどこにあるか把握しましょう。
その上で、サーマルのコアがどこにあるかを想像し、旋回中心をコアに寄せていくのです。
これさえ出来ていれば、上級者よりも多少上昇が遅くとも確実にサーマルで高度を獲得することができます。
この「一定バンク・一定速度の一定旋回」を練習するのには、まず早朝や夕方の静穏な空気の時に行うのが良いでしょう。
②常に左右どちらの翼が持ち上げられるかを感じ取る
次に「コアが前後左右どこにあるのか?」「より上昇が強いのはどっちなのか?」を判断するのに必要となる感覚を養います。
サーマルに入ったときバリオメーターが鳴るので、サーマルに入った事実は分かります。
では、右側にコアがあるのか?左側にコアがあるのか?これが判断できなければ、次にどう動くか決められません。
それを判断するのに必要なのが「翼が持ち上げられる感覚」です。
「右左どっちの翼がより持ち上げられているか」、感じ取ってみましょう。
サーマルに入った時、ランディングに向かっている時、夕方や曇天の時でも、「左右どちらの翼が持ち上げられているか」を常に感じていれば、次第に分かるようになってきます。
これが分かるようになれば、サーマルに入った時の最初のターンだけでなく、コアと旋回中心のズレにも気付けるようになるでしょう。
③上級者よりも先にテイクオフする
あとはサーマルタイムに何度も飛んで練習しましょう。
オススメはサーマルが出始めで誰も飛んでない時間帯。
ぶっ飛ぶ確率は高いですが、人に頼らず自分の感覚のみでソアリングできるので、より早く上達できます。
もちろん、ソアリングしたことがない人はフライト時間を積み重ねることが大事なので確実にサーマルが出ている時間帯に飛ぶことも必要です。
逆に中級者は上級者がテイクオフする前に空中にいることで、雲底までの道のりを教えてくれることでしょう。
ただ空を飛んでみたくて始めたハング・パラグライダー。
ソアリングして雲の高さまで上がることによって、楽しさと感動の可能性がさらに広がります。
たくさん飛んで、より高く、より楽しく大空を満喫しましょう。
ハンググライダー選手
鈴木由路(Suzuki Yuji)
[来歴]
大学に入学して半年後にハンググライダーで初めて空を飛ぶ。
「空を飛ぶ」ことは小さい頃からずっと夢に見ていたものだったからか、中高6年間ガンバったが全く上達しなかったバスケと比べるとかなりの速度で上達。
大学2年生の時に国内シリーズ戦に参加し初年度国内ランキング48位、3年目には国内ランキング10位になる。
大学最後の年、プレ世界選手権に出場しワイルドカードを獲得し、初山頂から4年10ヶ月で世界選手権出場を決め、それから計4回日本代表として世界選手権に出場している。
将来の夢は「世界選手権でメダル獲得」と「ハンググライダーをメジャースポーツにすること」。
選手として競技を続ける傍ら、「空の伝道師」として映画やテレビにも出演し普及活動に人生を賭けて挑んでいる。