鈴木由路の『ハング・パラグライダー上達スパイス』vol.2【P証取得に必要なのは?】
鈴木由路||アスリート

『上達スパイス』では、鈴木由路が初山頂から5年で世界選手権出場するに至った経験を踏まえ、どうやって上達していったら良いかのスパイスをお伝えしていきます。

第2回目は「P証を取得するための心構え」のお話をします。


僕は初山頂してから1年以内にパイロット証(以下、P証)を取得しました。
普通ではありえない速度かもしれません。

休みの日はほぼ欠かさず飛んでいましたし、飛ばない日はハングの雑誌を読んだり、ログブックを書いてたりしてました。
P証を取得するために毎日なにかしらハンググライダーのことに触れていました。

僕の今まで実践してきたこと、フライト経験、インストラクターとして考えてきたことを踏まえて、P証を取得するための心構えと取得する為に必要なことを書いていこうと思います。


パイロット証を取得するために技術を習得するのは当然のことですが、他にも大事なことがあると思っています。
それは「パイロット証は一人前のフライヤーになる」ということ。
「一人前」とは、他人を頼りにせず、自身で気象条件を判断し、常に謙虚で、安全なフライトを最優先にできるフライヤーのこと。
競技選手として、普及するものとして、インストラクターとしてやってきた僕なりの見解です。

もちろん1年足らずの経験値で気象条件を読めるとは思っていませんし、安全なフライトへの判断力が充分だとも思っていません。
ただその代わりに、常に謙虚であることが最重要、先輩フライヤーに質問するなど成長し続ける環境を作ることが大事だと思っています。

そして、忘れてはいけないのが「テイクオフ」と「ランディング」の技術です。
ソアリングの技術もP証には必要なことですが、謙虚な姿勢を忘れずテイクオフとランディングの技術が誰から見ても安心だと思えるくらいならば、多少ソアリングが下手でもP証の資格はあると思っています。


では、具体的にどんなことをするべきか?いくつか挙げてみました。
●ベテランフライヤーがテイクオフする際、横に付きテイクオフのタイミング判断を勉強する。
●インストラクターが誘導生を誘導している横に立って、ランディングの組み立て方、考え方、判断の基準などを吸収する。
●経験豊富なコンペティターに、過去のフライトで危機一髪だったフライトやミスを犯した経験などを聞き、今後自分にも降りかかるであろう状況を予習する。
●エリアの地理を地図で確認したり、過去の雑誌や記事からフライト技術の知識を学んだり、天気図の読み方など気象の基本的な知識を習得する。
●過去のフライトを頭の中で5回はリプレイし、各所でより最適な対処・判断はなかったか考察する。


P証になると、ホームエリアから外に出れるようになります。
引率としてBC級フライヤーから頼られることもあるでしょう。
ぜひ一人前フライヤーとしてどこへ行っても恥ずかしくないパイロットになってください。


まとめましょう。
・P証とは一人前のフライヤーになるということ。
・常に謙虚で安全とは何かを普段から考えていくことが大事。
・ベテランパイロットから様々なことを学び取ろう。
・飛べない日も何かしらハンググライダーに関する知識を学ぼう。


ハンググライダー選手
鈴木由路
[鈴木由路 来歴] 大学に入学して半年後にハンググライダーで初めて空を飛ぶ。
「空を飛ぶ」ことは小さい頃からずっと夢に見ていたものだったからか、中高6年間ガンバったが全く上達しなかったバスケと比べるとかなりの速度で上達。
大学2年生の時に国内シリーズ戦に参加し初年度国内ランキング48位、3年目には国内ランキング10位になる。
大学最後の年、プレ世界選手権に出場しワイルドカードを獲得し、初山頂から4年10ヶ月で世界選手権出場を決め、それから計4回日本代表として世界選手権に出場している。

将来の夢は「世界選手権でメダル獲得」と「ハンググライダーをメジャースポーツにすること」。
選手として競技を続ける傍ら、「空の伝道師」として映画やテレビにも出演し普及活動に人生を賭けて挑んでいる。