鈴木由路||特集(お店情報など)

僕はハンググライダー選手として「世界選手権でメダル獲得」を目指している傍ら、ハンググライダーの普及活動にも力を入れています。

「自然や地球を肌で感じることができて、普段の生活では絶対に出会えない感動を味わえる、こんなにも楽しいスポーツをなんでみんなやらないんだろう?みんなもやればいいのに。」
こんな想いから競技と普及に人生を注いでいます。

日本各地、世界各地を飛んできた僕が伝えたい”空の魅力”を8回に渡って伝えていきます。


今回は第2回目。「とんび」のお話をしましょう。


とんびにどんなイメージをお持ちですか?
山や海辺にいて、フワーッと回りながら地上の様子を伺ってるイメージでしょうか?


実はとんび。上昇気流を捕まえる天才なんです。
自然界の住人に天才なんて言ったら、おこがましいですね(笑)


とはいえ、僕たちフライヤーは「どこに上昇気流があるのか?どうやったら雲の高さまで上がれるか?」を常に考えています。
それをとんび達はいとも簡単に上昇気流を見つけ、いとも簡単に雲の高さまで上がっていきます。
僕たちにとっては、まさに先生みたいなものなんです。


ハンググライダーで空を飛んでいると、その自然界の天才“とんび”と一緒に飛ぶことも可能なんです。

彼らは僕らが近づいても逃げることはありません。
不器用に飛んでいる姿を見て「捕まえられるものならやってみな」とでも思っているのでしょう。

とんび先生が上昇気流を捕まえる為に旋回(=ソアリング)しているところに僕らが入っていっても動じません。
僕らが一生懸命上昇気流にしがみついて高度を上げている横で、彼らはひょいっと上がっていきます。
とんび先生と目が合うと「なにやってんだ。下手だなぁ。」と言われるよう。


とあるとんび先生との思い出。
山沿いに真っ直ぐ北に向かっているとき、気付くと右隣5mくらいのところでとんび先生が同じ方向に飛んでいました。
何度も目が合い(そんな気がしただけですが)、「次の上昇気流はどっちですかね?」「先生は何を見て飛んでるの?」と質問を投げかけながら5分くらい一緒に飛んでいました。
すると「君はどこへ行くんだい?上昇気流はこっちだぜ。」と吐き捨てるように呟いて(これも言われた気がしただけ)、右の方にスーッと行ってしまいました。


とんび先生との思い出で一番印象深かったのは、とある長野でのできごと。
夕方16時頃、2時間近く飛んでそろそろランディングしようかと思って旋回していたら、とんび30羽くらいが集まってきてゆる~く旋回しだしました。
そこは全く乱れのないまったりとした上昇気流の中。上に20羽、下に10羽のとんび。
とんび達と一緒に旋回する自分。
まさに自然界と同化したような、そんな感覚に浸った昼下がりでした。

ハンググライダーととんびby Jochen